こんにちは!しょーです。
ブログをご覧いただき、ありがとうございます。
本記事はコロナ禍の前に実施した内容となります。
要介護者の旅行頻度について
病気や事故などで身体が不自由になり、旅行に行きたくても諦めてしまうケースは少なくありません。
実際に介護が必要な状態になると、旅行に行く頻度はガクッと減ってしまいます。
要介護状態前後の旅行頻度について
(要介護状態前)1年に1回以上:40%
引用元:国土交通政策研究所報 第59号 2016年冬季
(要介護状態後)1年に1回以上:8%
シニア世代が実現したい夢
第1位:旅行
引用元:日本ロングライフ調査
旅行に行きたい気持ちはあるけど、要介護状態になるとほとんどの方が行けていないようですね。
妻と思い出の半べえに行きたい!
Aさんは、過去に首や腰の手術をされており、後遺症として左足の麻痺と強い神経痛が残存。
また、歩行も不安定で、何度も転倒した経験があります。
そのため、痛みと転倒に対する恐怖心から、活動意欲が減退。
ついには、夜だけでなく日中もベッドで過ごされるようになりました。
Aさんのリハビリを担当している時、ふとこのようなことを聞いてみました。
「もし余命が決まっているとしたら、何かやり残したことはないですか?」
Aさんはしばらく考えて一言。
「妻と思い出の半べえに行きたい!」
日帰り旅行の実現に向けて
話を聞くと、結婚記念日に奥様と『半べえ』で食事をされていたそうです。
半べえは、広島でも有名な日本庭園がある料亭になります。
旅行計画について
どうしたら思い出の半べえに行けるだろうか…
日中もベッドで過ごされていた方なので、長時間の外出は体力的にも厳しいことは容易に想像できます。
そのため、これまでのリハビリ内容についても見直す必要がありました。
まず、担当のケアマネジャーに相談すると
そんな想いを持たれていたとは知らなかったです。
ケアプランにも新たな目標として追加しましょう。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護保険法に位置づけられた職種であり、介護保険の根幹である、「ケアマネジメント」を担う専門職です。
引用元:一般社団法人 日本介護支援専門員協会より
もし料亭に行けたとしても、途中で体調を崩されることも考えられます。
そのため、緊急時の対応について主治医にも相談しました。
Aさんがそんなことを?
ぜひ行ってもらいたいね!途中で体調を崩されることがあったら、いつでも電話して。
担当のケアマネジャーも主治医も協力してくださるとのことで、「○月に妻と思い出の半べえに行って食事をする」というひとつの目標ができました。
半べえに行けるように、リハビリにも取り組んでいきましょうね!
寝てばかりじゃいけんのぉー。
実は半べえの近くにある比治山神社にも行ってみたいんじゃ・・・
比治山神社には特別な思い出があるんですか?
小さい頃、親父とよく行きよった神社なんよ!
それはぜひ行ってみましょう!
半べえでゆっくり食事をして、その後に比治山神社で参拝するという流れがいいかもしれませんね!
まずは旅行会社に相談
今回はオーダーメイドの日帰り旅行ということで、さっそく旅行会社に相談してみました。
料亭 半べえの予約はもちろん、介護タクシーや電車など交通機関の手配もお願いしました。
そして、旅行傷害保険にも入っていただき、日帰り旅行の手続きは無事完了!
あとは当日を迎えるだけです。
旅行業に登録していない場合、旅行者から報酬を得たり、運送あるいは宿泊サービスを手配することは旅行業法に違反する可能性があります!
事前準備こそが、成功の鍵を握っている!
冒頭でも説明しましたが、Aさんはベッドで寝ていることが多く、通院以外の外出はない状況でした。
そのため、日帰り旅行となると一気にハードルが高くなります。
だからこそ、精神的な不安を少しでも減らすために、事前準備は徹底的に行う必要がありました。
そこでまずは、半べえの下見に行ってきました。
トイレや階段、遊歩道・・・
車椅子ユーザーの場合、いくつかハードルを乗り越えなければならない場所があります。
スタッフと当日の対応について打ち合わせをした際、
「車椅子でも大丈夫ですよ」「困ったことがあればいつでもお声掛けください」
と優しく気遣ってくださいました。
心のバリアフリーが最高に素晴らしかったです!
お部屋は2階にあるそうなので、エレベーターで上がりましょう。
階段で部屋まで行ってみようかのぉー。
え?階段ですか!?
どちらにしろ、階段の上り下りは練習せんといけんじゃろ。
確かに家の前には階段が5段あるため、階段昇降の練習は必要です。
それでも、Aさんから前向きな発言があったことにとても驚きました。
旅行に向けて、Aさんの気持ちにも少しずつ変化が生じていました。
比治山神社の下見にも行きましたが、車椅子ユーザーでも安心して参拝できる場所でした。
詳細はこちらの記事をご覧ください↓
リハビリの取り組み
トイレの練習、歩行練習、電車に乗る練習など・・・
目的・目標が明確になったこともあり、リハビリにも意欲的に取り組まれました。
そして、日帰り旅行の実現!
半べえ庭園で記念写真
比治山神社で参拝
最初は不安な気持ちを抱えていたAさんでした。
日帰り旅行といっても、本当に行けるんだろうか・・・
そんな不安を払拭するかのように、一生懸命リハビリに取り組まれました。
そして、念願の思い出の場所に行けたときには涙ぐまれていました。
今でもその姿は忘れません。
旅行後の変化について
しばらくして嬉しい知らせが入りました。
旅行後、奥様と一緒に電車に乗ってお出かけされたそうです。
最初の頃はずっとベッドで寝ていたAさんですよ?
そんなAさんが交通機関を使って外出するなんて・・・(涙)
こちらは活動範囲を示すグラフ(LSA)になります。
旅行前と旅行後で活動範囲が拡大していることがわかります。
どうやら「旅行に行けた!」という経験が自信になったようです。
Life Space Assessment(LSA)とは、個人の生活の空間的な広がりにおける移動を評価する指標。
引用元:公益社団法人 日本理学療法士協会 E-SASより
生活空間とは、ある期間において活動を実施するために日常的に外出した距離によって規定される。
まとめ
今回は「病気で旅行を諦めていた方が念願の旅行に行けた!」という話について紹介しました。
「身体に不安がある」
「旅館がバリアフリー対応ではない」
など内的・外的要因から旅行を諦めてしまうケースは少なくありません。
それでも、「〜したい!」という想いがあるのであれば、その気持ちを大切にしてほしいです。
実際に挑戦してみることで、そこから新たな世界が広がるかもしれません。
今回のAさんも、旅行に行けたという成功体験が主体性と自己効力感の向上につながり、活動範囲の拡大につながったのではないでしょうか?
今後も病気で旅行を諦めている方がいれば、少しでも実現できるように関わっていきたいと思います。
それでは、今日も良い1日になりますように!
今回は、全身に強い痛みがあり、外出すら諦めていた方が、日帰り旅行に行けた話について紹介します!